香港と台湾
香港は1997年に返還され23年たった。
逆に言うならば、まだ27年間”一国二制度”が続くのである。
続くはずであった。
しかし、中国にとって ”まだ”は”もう”である。
中国共産党指導部はもう23年もたったのだから、そして香港の治安の悪さにこれだけ耐えてきたのだから、ということで、『国家安全法』を持ち出した。
22日に始まった全国人民代表大会(別称、中国共産党指導部議案自動的承認大会)常務委員会に『国家安全法』が提出された。
香港デモは昨年後半から規制を受けていた。コロナウイルス禍になってからはデモは休止させられている。
しかし、香港では今後デモが
”6月4日、天安門事件へのデモ”
”6月9日、昨年最初の大規模デモが起きた記念の日”
”7月1日、香港が英国から中国に返還された記念の日”
と続く予定である。
特に天安門事件は触れても口に出してもいけない事件である。
中国本土ではSNSなどが当局によって厳重な規制がされているとはいえ、”上に政策あれば下に対策あり”の国である。裏のSNSが広がっており、天安門事件が拡散されてしまう懸念が強い。
見方を変えて、台湾においては蔡英文総統が再選されている。
言うまでもなく、昨年の香港での『逃亡犯条例』をきっかけとした民主主義弾圧を目の当たりにした台湾国民の怒りが、親中派の候補の当選を許さなかったのである。
圧勝であった。
中国共産党は、香港→台湾→香港という民主主義のうねりのUターンを恐れている。
香港が頑張り台湾が勝った。台湾の頑張りを香港で再び、という循環を断ち切らねば恣意的な統治は不可能となる。
この動きに対し英外務省報道官は、”中国が香港の権利と自由、そして高度な自治を尊重すること”を期待すると述べている。
香港の最後の総督を務めたクリス・パッテン氏は”中国の試みは香港の自治に対する包括的な攻撃だ”と述べているようである。
米国では昨年『香港人権民主法』が議会を通過し大統領署名のもと、成立している。香港の自治が維持されているか毎年検証し議会に報告する必要がある。
自治が否定された報告が出るようであれば(出るだろうが)香港のが特別な地位を失う、或いは米国内での中国人の地位・財産にも大きな影響を及ぼすであろう。
中国は今回の全人代の前に、香港の民主的な活動家をまとめて強引に取り締まり連れ去っている。デモに至らない集会でも強引に拘束監禁をしている。小学生も例外ではないという報道もある。
対する日本政府は、菅官房長官が”習近平氏の国賓来日スケジュールの検討に入る”と言っている。
以前このブログに、コロナ禍後は日本にとって
”中国とアメリカの力相撲の股裂きの憂き目にあう”
と書いたが、経済・安全保障の絡みの中での日本政府の熟慮が求められる。